私たちは日常生活の中で「最近ストレスが多い」とか「○○さんと一緒に仕事をするのはストレスがきつい」などと何気ない会話の中で当たり前に「ストレス」という言葉を口にしています。しかし、「ストレスって何ですか」と尋ねられたら、すぐに「それはこういうことだよ」ってすらすら答えられる人は少ないと思います。

 もともと「ストレス」の語源は工学や物理学の用語なのです。ある材料等に外部から継続した力を加えたときに、材料等の内部で生じる「応力」という外部からの力に対抗する力が発生して、歪んだり壊れたりしないように頑張りますが、限界に達したときにはその材料等の分子構造が歪んだり破壊されたりする反応を示しますが、その時の内部で生じる「応力」のことを「ストレス」といいます。

 人間の場合は、工学や物理学とは少し違っていて、次の2つを合わせて、「ストレス」といいます。

  • ストレッサー:ストレス要因
  • ストレス反応:ストレッサーによって引き起こされた心理的反応、身体的反応、行動的反応

 工学でいうストレスは人間でいえば、ある面「ストレス耐性」に相当します。また、材料等の分子構造が歪んだりする反応は人間では 上記②の各種「ストレス反応」に当たります。

 30年も前になりますが、日航機の墜落事故の時に部品の「金属疲労により破壊が生じた」などと報じられ当時「金属疲労」という言葉が流行語になりましたが、まさにその原因になる力のことがストレスなんだと理解するのがよろしいかと思います。一見頑強に見える金属材料でも、長い間継続して力が加わると、短期的には問題なくても時間経過でやがては破壊する、といった事象も人間の場合と似ていますね。

 一方、人間がスポーツで身体を鍛えるときに、ウエイトトレーニングを行ったり、ボクサーがハードなスパーリングを続けたりといったトレーニングは、スポーツマンとしてより成長し、勝負の場で勝てるためのストレスを自ら課して、敢えて挑んでいるといったようなことは、企業内での社員教育や管理職訓練などでも見られますし、日常の先輩が後輩を育成する場面でも見られます。大切なことは「ストレスは全てが悪である」と決めつけずに、人材育成面では適切にストレスを乗り越えさせ、成長のためにならない悪いストレスは排除するなどと、臨機応変に判断することが大切ですね。