人間にストレスが加わると、最初に大脳皮質にて感じ取り、大脳辺縁系に伝達され過去の経験に基づき認知・評価されて不安等の感情が生じると同時に、中枢神経系と視床下部に伝達されて自律神経系、内分泌系、免疫系に作用を及ぼします。(次図参照)

 中枢神経系では脳内伝達物質として、①ドーパミン、②セロトニン、③ノルアドレナリンが分泌されます。

 各々の働きと影響を以下に記述しますが、少なくとも②のセロトニンの分泌異常(減少)がうつ病と密接に関わっていることは是非覚えて下さい。

①ドーパミン

・役割として、運動やホルモン分泌の調節、快の感情、意欲、学習などに作用し、やる気を引き出す役割を持ちます。

・過剰時は、統合失調症の陽性反応(幻視・幻聴・妄想など)、強迫性障害の原因になる可能性があると言われています。

・減少時は、筋固縮、振戦などの運動障害や、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの原因になる可能性があると言われています。

②セロトニン

・役割として、生体リズムや神経内分泌、睡眠、体温調節などに作用します。

・過剰時は、軽度であれば、不安感、混乱、イライラ、頭痛、めまいなどがあり、重くなると、嘔吐、下痢、発熱、昏睡状態などの可能性があると言われています。

・減少時は、気分が沈みやすくうつ傾向になります。さらには欲求不満、不眠、倦怠感、体温調整不良なども引き起こします。

③ノルアドレナリン

・役割として、ストレス刺激によって放出され、覚醒、学習、鎮痛、排尿、血液循環、ホルモン系の調節、体温維持を行います。

ここで、「ノル」とは「正規化合物」と言う意味を表します。

・過剰時には、躁状態を引き起こしたり、高血圧、糖尿病の原因になる可能性があると言われています。

・減少時には、意欲の低下、思考力の低下が引き起こされ、うつ病などの原因になる可能性があると言われています。

 これら中枢神経系から分泌される神経伝達物質の作用もあり、ストレスの強さや種類によってさまざまな感情や症状が引き起こされるのです。

 次に自律神経に伝達された影響について説明します。

自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があります。

一般的に昼間の活動時には交感神経が優位に働いており、夜間の睡眠時や安らいでいるときなどは副交感神経が優位に働いています。

では、ストレスを感じた場合はどうでしょうか。

ストレスを感じて、大脳皮質⇒大脳辺縁系⇒視床下部⇒自律神経系と伝達されると、当然に交感神経が優位に働きます。

その結果、次図のとおり心拍や呼吸が速くなって、気管支が拡張、末梢血管の収縮、尿産生の抑制、消化機能の抑制、生殖機能の抑制が起こります。

特に末梢血管が収縮した結果、血圧の上昇も起こりますし、心拍や呼吸の増加によって、ときには過呼吸、動悸、息切れなども起こったりします。

図1-4.ストレスと心身の反応のメカニズム

内分泌系の影響としては、副腎の関わりが重要です。
副腎はみぎ次図のように腎臓の上にある三角形を変形させた形状の臓器ですが、中央を副腎髄質、周辺を副腎皮質といいます。
副腎皮質では、コルチゾールとアルドステロンというホルモンを産生します。
コルチゾールはストレスから体を守り、糖利用の調節、血圧を正常に保つなど必要不可欠なホルモンです。
アルドステロンは塩分、カリウム、水分のバランスを保つ役割を果たすと言われております。

また、副腎髄質ではアドレナリンとノルアドレナリンというホルモンを産生します。
これらのホルモンは、心臓や血管をはじめ全身の機能が正常に働くのにいろいろ重要な役割を持っていますが、なかでもストレスが加わった時に血圧を上昇させたり、心臓から血液を送り出すポンプとしての力を強めたり、ストレスに対抗するためのエネルギー源としてブドウ糖を血中に増加させたりする重要な働きをすると言われております。

免疫系の影響としては、NK細胞・T細胞の機能低下やリンパ球の反応低下が生じます。
これらの影響により、ウィルス性疾患に感染しやすくなったり、癌細胞の増殖を止められなくなったりといったリスクにも繋がります。

また糖の産生、凝固促進など免疫反応も現れます。
これについては、高血糖や血栓など、脳・心血管系の病気を誘発するリスクにも繋がります。

図1-2.副腎の構造とホルモン分泌の関係